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『般若心経』『七仏通戒偈』『円頓章』の解説

『般若心経』とは

数多くの仏典の中で、簡潔に仏教思想の要点を述べているのが、『般若心経』(はんにゃしんぎょう)です。古来より今日に至るまで日本で最も広く読誦や写経に用いられてきたように、その功徳は甚大です(ただし、用いない一部の宗派もあります)。また、特定の仏様や菩薩様の信仰に限定されない内容から、各宗共通の法要儀式をはじめ、あらゆる仏教行事に用いられています。

漢訳で本文わずか262文字のお経ですが、空(くう)思想を説く般若経典を集大成した『大般若経』六百巻に対して、般若思想の要点が説かれています。正しくは「摩訶般若波羅蜜多心経」といい、偉大なる仏の智慧(摩訶般若)によってさとりの彼岸へ至るための(波羅蜜多)肝心要めのお経(心経)ということから、一般的に『般若心経』として親しまれている最もポピュラーなお経です。

『七仏通戒偈』とは

『七仏通戒偈』は、古くから唱えられてきた偈文です。七仏とはお釈迦様以前の遠い過去に出現した過去七仏(毘婆尸仏・尸棄仏・毘舎浮仏・拘留孫仏・拘那含牟尼仏・迦葉仏・釈迦牟尼仏)のことです。

その偈とは「悪の行為はせず、多くの善事をすることに努め、自らの心を浄めていく」で、とても簡潔でわかりやすい教えですので、お写経としておすすめしています。

この『七仏通戒偈』は過去七仏に共に大切にした戒めの徳目ですから、未来の私たちの生活も共通する心構えです。「通戒」とはそういう意味があります。

また、お釈迦様の教え、すなわち仏教の教えは、過去の諸仏から継承され、いつの時代にも通用する教え(普遍の真理)であることを示したものです。結局、仏教はこの一偈に帰するといわれるように、『七仏通戒偈』を心に留めて、日々の生活を送りたいものです。

『円頓章』とは

円頓(えんどん)とは、円満頓足。現身に持っている心に、すべての功徳を円満にかたよらず、欠けることなく具えているとさとって、頓足(たちどころ)に成仏するという、天台円教の究極の教えから出た言葉です。

中国天台宗の高祖・天台智者大師智顗(ちぎ)によって天台止観の観法の真髄が説かれた『摩訶止観』の深旨を133文字で示した序分部分と、中国天台宗六祖の荊溪大師湛然が『摩訶止観輔行伝弘決』において天台大師説の一念三千を解説した最後に述べられた部分(最後の六句)から、『円頓章』は構成されています。

冒頭が「円頓者」で始まることから古来より『円頓章』と称され、まさに天台教学の中心思想が短い文言の中にすべて含まれていれることから、お写経としておすすめしています。